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約5年の大阪は泉佐野の生活を経て、次は川崎は溝の口。美味しいものをお伝えできれば。

【新宿三丁目】上燗屋 富久|おでんの概念が変わる「黄金出汁」の深みに感動。3月で惜しまれつつ閉店。

新宿三丁目、末広亭の裏手。

賑やかな街並みから一本路地に入ると、昭和の趣を色濃く残す一角が現れます。

今回訪れたのは、名店「上燗屋 富久(じょうかんや とみきゅう)」

友人が「かまいたちの番組で紹介されていて、どうしても行ってみたい!」と熱望していたのがきっかけでした。

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都会の喧騒を忘れさせる、凛とした渋い佇まい。

「上燗屋」という名にふさわしい、お酒好きを惹きつける独特のオーラが漂っています。

期待に胸を膨らませて暖簾をくぐり、まずはキンキンのビールで喉を潤します。

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最高のスタートを切ったところで、ここからはお目当ての「おでん」や「水餃子」を堪能した実食レポートをお届けします!

 

◾️ 実食

◆おでん:澄んだ出汁に宿る職人技。おでんの概念が変わる至福の一皿

席につき、ビールで喉を潤したところで、いよいよ主役の「おでん」の登場です。

富久のおでんを一口食べて驚くのが、その「出汁」の優しさ。関東風の濃い色合いとは対照的な、濁りのない澄み切ったつゆは、まさに「西の出汁」を感じさせる上品な味わいです。

まず運ばれてきたのは、大根や玉子といった定番のネタ(各150円)。

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ここで心憎いのが、おでんの取り皿とは別に、熱々の出汁が入ったお椀を添えてくれること。 粋な心遣いに、食べる前から心が温まります。

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続いては、程よく食べ応えのあるラインナップへ。

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ちくわぶ、厚揚げ(各300円)と食べ進めますが、ここで特筆したいのが「つみれ(450円)」です。口の中でふわりと解け、魚の旨味がじんわりと広がるそのクオリティは、もはや「おでんの種」という枠に収まらない、立派なメインディッシュ。この一玉のために足を運ぶ価値がある、唯一無二の逸品でした。

最後は、出汁をたっぷりと含んだちくわと豆腐(各300円)で締めくくります。

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これらのおでんが、なぜここまで「一品料理」としての完成度が高いのか。

聞けば、もともとは和歌山出身の方が営まれていたお店だそうで、現在は共に働かれていた和食料理人としての経験を持つ方がその味を引き継いでいるのだとか。単なる「煮込み料理」の範疇を超えた、日本料理のような奥深さを湛えているのも納得の美味しさでした。

 

◆水ぎょうざ:1日5食限定。おでん出汁でいただく贅沢な「水ぎょうざ」

おでんを堪能している間に、どうしても気になっていたメニューがありました。

店内の壁に貼られた、「一日五食限定」という文字。

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その名も、「おでんやさんの水ぎょうざ(850円)」です。

水餃子としては少し強気の価格設定に感じますが、限定5食という希少さと「おでんやさんの」というフレーズに惹かれ、迷わず注文しました。

運ばれてきたのは、おでんの黄金色の出汁に優雅に浮かぶ大ぶりの餃子。

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一口食べて、その価格の理由がすぐに分かりました。

モチモチの皮を破ると、中から溢れ出すのは肉の力強い旨味。 まるで小籠包を食べているかのようなジューシーな肉汁が、優しいおでん出汁と混ざり合い、口の中で極上のスープへと変化します。

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添えられた柚子胡椒を少し乗せれば、ピリッとした刺激が肉の甘みをさらに引き立ててくれます。

おでんの延長線上にあるようでいて、全く別の華やかさを持つこの一皿。

5食限定のハードルを越えてでも食べる価値が十分にある、まさに「富久」を象徴するような名脇役でした。

 

◾️店内の雰囲気:昭和の息遣いを感じる、カウンターの小宇宙

暖簾をくぐった瞬間に感じるのは、長い年月が作り上げた圧倒的な「渋さ」です。

決して広くはない店内ですが、使い込まれたカウンターの深い光沢や、壁に掛けられた古時計のひとつひとつに、この店が歩んできた歴史が宿っています。

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お店を切り盛りされているのは、女性お二人。

その絶妙なチームワークと、カウンター越しに届く柔らかな接客が、初めて訪れた私たちの緊張をスッと解いてくれます。物理的な距離だけでなく、心の距離も近く、おでんを待つ間も自然と会話が弾む心地よさがありました。

ふと上を見上げると、手書きのドリンクメニューが。

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お酒のラインナップは、ビール、焼酎、日本酒と、実に潔くシンプル。あれこれ迷う必要はありません。「おでんには、やっぱりこれだよね」と、直感で選べる良さがあります。

そして、何より目を引くのが、壁一面に並んだおでんネタの品書きです。

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この達筆で渋すぎる木札を眺めているだけで、お酒がもう一杯飲めてしまいそう。

都会の喧騒から完全に遮断されたこの空間で、女性お二人が守り続ける温かな味と空気。新宿にいることを忘れて、ただただ「酔い」に身を任せたくなる、そんな贅沢な時間がここには流れていました。

 

◾️まとめ:新宿三丁目の至宝。その歴史に幕が下りる前に

「かまいたち」の番組をきっかけに訪れた**「上燗屋 富久」**。

そこには、職人技が光る優しいおでんと、都会の喧騒を忘れさせてくれる最高の時間が待っていました。

しかし残念なことに、建物の老朽化などの影響で、今年3月いっぱいで長い歴史に幕を閉じられるそうです。 新宿の路地裏で守り続けられてきたこの味と空間を体験できるのは、あとわずか。

あの透き通る出汁と、絶品のつみれに心癒されたい方は、ぜひ早めに暖簾をくぐってみてください。

 

■ 店舗情報

店名:上燗屋 富久(じょうかんや とみきゅう)

住所:東京都新宿区新宿3-12-1

電話番号:03-3354-3608

営業時間:17:00 〜 23:00(L.O. 22:30)

営業日:月曜日〜土曜日(※2026年3月末日をもって閉店予定)

定休日:日曜・祝日

Webサイト:https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13046694/