「松寿司」の記事はこれで3つ目となる。大好きだから、仕方ない。
先日、閉店間際に訪れた。暖簾が下されていたので、普通はもう入れない。そこを入れてくれる器量の大きさは、流石と言わざるを得ない。
しかも、注文は「新鮮な魚で適当にお願いします」という何とも抽象的で、困ってしまいそうな、そんな内容になってしまった。仕方がない、暖簾が下がったお店では、長居なんかしてはいけない。ましてや、手間のかかる料理は避けた方がよい。お店に任せるのが一番だと思ったのだ。
こうして注文した、おそらくはメニューにはない即興で作られた料理に、僕は度肝を抜かれた。感激しそうになり、涙さえも流れそうになった。
出てきた料理は、このお洒落な4点の刺身だ。お洒落な理由は、ふた切れという量でも圧倒的な鮮度でもって、皿に盛られ、そして華やかささえも醸し出されている点だ。
何かの黄金比率が使われているんじゃないかと思うくらいに、完成されている。鮮度はもちろんのこと、大きさや柔らかさやサイズ感には数学的な思考が入っている気がするし、色合いのバランスには絵画的な芸術さを兼ねそろえているように感じる。
そんなことを考えながら、冷えたビールと一緒に食べ始めると、僕のまわりには至福の雰囲気が漂い始める。
もちろんメニューはある。
メニューに載っている料理は安定した美味しさがある。メニュー以外の料理を注文できると、どこか特別感のようなものが生まれ、そのぶん嬉しさが伴ってくる。
メニュー外の料理の注文は、勇気と勢いが必要だが、タイミングによるところがとても大きいと思う。お店側の都合と、こちら側の都合が、マッチさえすればよいのだ。タイミングと運次第だ。
メニュー外の注文が通った嬉しさで、綴ってしまった。色んな楽しみ方ができる「松寿司」を、僕は心の底からおすすめしたい。